ラカン精神科学研究所 福岡

福岡の精神分析家 進志崇献 が精神分析的視点で綴っています。人はコンプレックス(無意識)に支配されています。

映画 「後妻業の女」にみる 食の母子関係(File.005)

精神分析的考察をします。

「後妻業の女」ネタバレあり。

「後妻業の女」観てきました。前回の上映終了後、劇場から出てくる既鑑賞者達の何か魂を抜かれたかのような表情をみて「あぁこりゃなかなか手強そう」と思いながらユナイティッドキャナルで初見に挑んだ。

主人公・小夜子を演じるのは、映画・演劇界で数々の賞を受賞、日本を代表する名女優・大竹しのぶ。小夜子と共に老人達を騙していく結婚相談所所長・柏木に、日本映画界で唯一無二の存在感を放つ豊川悦司

大竹しのぶのナリキリ様にグイグイ引き込まれながらも、終盤の興信所調査員の本多(永瀬正敏:女優・歌手の小泉今日子の元夫)が脅迫行為をしだす当たりからエンディングまでが何かスッキリしなくて消化不良感は否めなかった。まぁ私も中年の域に達してますので充分世の中の世知辛さを感じ笑わせて頂きましたので「よし」としましょう。

ここからが精神分析的語り

母、後妻業の女、小夜子:真っ当に生きていない尊敬できない母、息子に愛情を注ぐ気もない。事実、30近くもなって自立せず金を無心する息子は邪魔くさい存在で早く「厄介払い」をしたいと思っている。

小夜子の放蕩息子・博司:既に30近くになっているのにも関わらず自立できず、常に見捨てられ不安を抱え、母からの愛情が受け取れないと諦め、愛情の代替物として金銭を要求する。自分の歳もわかってない母は全く自分に関心がないと受け取っている息子。当然、父不在で、世の中の掟もわかっていないし、成長する過程でのモデルも存在せず、自我脆弱。

当然の事ながら後妻業の小夜子には当たり前の夫は存在せず、夫の場所に居る人間は「金づる」であり、博司にとっての「父」は不在である。

例1)先に月刊 精神分析での記事にもなっていたが映画「葛城事件(2016)」で描かれる崩壊直前家族も同様で、主婦が家族の為に食事をつくるシーンは一切なく、家族の団欒の食事のシーンで登場したメニューは冒頭から「宅配ピザ」「コンビニ弁当」「カップラーメン」で母が調理の為に包丁を手に取るシーンは一切なかった。一家四人の生活が狂い始め、各々が破綻していく。

参考 葛城事件考察 月刊 精神分析 2016年10月号
http://agency-inc.com/kasturagi-incident/

例2)私が最近、Amazonプライムで鑑賞した映画「冷たい熱帯魚(2010)」の冒頭のシーンは主婦のスーパーでの買い物シーン。冷凍食品とインスタント白米、カップみそ汁を買い物カゴに無造作に次々と流しこむかの所作は異様な感じがした。家に帰れば電子レンジで加熱するだけ。そういったメニューなのだが、家族は普通に食事をし、セカンドシーンでは家に「娘が万引きをした」と言う連絡が入るのきっかけに、立て続けに家族関係が瓦解していく。

映画解説「フード理論」

映画関係の情報をネットで検索しているとYoutubeにアップされている「映画評論番組」を視聴してしまう。

その代表がライムスター宇多丸師匠のウィークエンド・シャッフルの「ムービーウォッチメン」であったり、たまむすびの町山智浩さんの「アメリカ流れ者」。

・・で、宇多丸師匠のラジオ番組内で取り上げられていたのが福田里香さんの「フード理論」である。

以下引用-----
・鼻持ちならない金持ちの子供は、食い意地がはっていて太っている。
・絶世の美女は、何も食べない。
・カーチェイスで、はね飛ばされるのは、いつも果物屋。
以上引用-----

「あるある」と納得させられる記載が並ぶ。精神分析的視点で追加したい項目は、

・「崩壊して行く家族・家庭の食事には母の手料理は存在しない。」・・である。

精神分析の世界では「食=母」と定義しています。

人は、乳児時代、母の胸に抱っこされ温かいまなざしの中でオッパイを吸い、満足感を味合う。そこで獲得した「基本的信頼」を基礎に「人間関係」や「自己肯定感」を作っていく。

その延長上にあるのが一家団欒の食事風景で、やはり家族同士が目をみて会話をしながら楽しく食事をするのが理想。出される母の手料理は「愛情」そのものです。

「後妻業の女(2016)」「葛城事件(2016)」「冷たい熱帯魚(2010)」どの映画の中の家族も崩壊中か崩壊前夜で、母の手料理の影もなかった。映画の描写でも、母の手料理のない家庭は愛の無い家庭と同意なのだ。。

例3)映画「後妻業の女」の中で、後妻業の女、小夜子が、放蕩息子・博司の厄介払いをするシーンには大量の「宅配ピザ」と「出前の寿司桶」が映り込み。「食べたらさっさと出ておいき!二度とこの家に来るんじゃないよ!」と言い放つ様子が描かれています。

精神分析的、映画における「フード理論」

「崩壊して行く家族・家庭の食事には母の手料理は存在しない。」

オススメです!

関係ありませんけど追伸、今朝、大濠公園を歩くと「福岡草笛吹こう会」の壮年部の活動に遭遇しました。遠くからでも「上を向いて歩こう」「手のひらを太陽に」がしっかり聴き取れました。草笛教室15周年だそうで・・こちらもお勧めです!

親子関係・引きこもりのご相談承ります。

進志崇献(しんしそうけん):lacan.msl.f@gmail.com

映画「後妻業の女」公式サイト
http://www.gosaigyo.com/

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