ラカン精神科学研究所 福岡

福岡の精神分析家 進志崇献 が精神分析的視点で綴っています。人はコンプレックス(無意識)に支配されています。

「捨てがたき人々(2014年)」の精神分析的考察(File.189)

こんにちは、精神分析家 進志崇献@福岡です。

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Amazonプライムビデオで鑑賞。R18+指定作品。

久々に「人の業」を感じさせる作品に出会いました。

物語の冒頭、こういうナレーションで始まります。

「何故、私はこの世に生を受けたのでしょうか?何故、生きているのでしょうか?そして、何故、死に至るのでしょうか?」

そう、これは哲学の映画です。

主人公は勇介。故郷の五島に帰ってきたムサイ中年おじさん。自分の事を「虫けら野郎」と卑下する勇介。なぜこんな田舎に?と問われると「生きるのに飽きた」とこたえます。この、やる気なし性欲だけのムサイおじさんを中心に物語は進んでいきます。

もうひとりの登場人物、新興宗教:神我の湖(自我を超えた真実の愛 愛は許し)にハマっている弁当屋のアルバイト店員:京子。彼女の愛読書としてロシアの文豪フョードル・ドストエフスキーの長編小説で代表作「罪と罰」がちらちらでてきます。これは隠喩表現の1つ。京子は原作とは違って顔に生まれつきに顔に痣(あざ)がある設定。

京子自身も援助交際まがいな事をしているのだが、実母もはげオヤジ(石川さん)と不倫、後に二人揃って心中?、叔母も他者とオーラルセックス。後に勇介とも肉体関係をもつ。自分の生活環境にイライラして宗教にハマっているのかもしれないが、京子もセックス目的で近づいてきた勇介の子どもを宿す。

新興宗教の幹部も、信者と不倫。後に、信者の夫(吉田チーフ)は首を吊って自殺。後に幹部も自殺。

節操がないと言えばそれまでなのだが、勇介と関係を持った京子の叔母(美保純)が「人間って、他人のためにとかよりも、結局は自分が食う、セックスする、カネを得ることからは逃げられんってことっち」「そういう意味だと、案外あんた、人間らしいとかもね」と呟くシーンが印象的。

勇介は京子に「子どもを堕ろせ」と迫るものの、結局は一緒に生活をする事となる。

10年経って、幸せな家庭を築いたのかと言えば、京子は新興宗教の男と不倫。勇介は実子が懐かず家庭内暴力。実子はこう言う「お母さん、僕、普通の家に生れて来たかった」「なんで僕産んだと?」「アンタ達の子どもで生れて来たくなかった!」と。

不幸の世代間連鎖と連綿と続いていくのであった。

ラストシーンで五島の海岸を歩きながら勇介は「人は何故この世に生を受けたのでしょうか?人は何故、生きているのでしょうか?そして、何故、死に至るのでしょうか?なぜ私は、なぜ私は、狸穴勇介なのでしょうか?!!」と叫びます。

今年も多くの芸能人が不倫問題で世を騒がせた・・日本は法治国家でございまして、ルールを守るのが前提ですが、はてさて、人の精神構造はそういうふうには出来ていなくて、なかなか面倒なものでございます。

自分はこうあるべき「自我理想」に向かって進んでいいく筈が、なかなか順風満帆とはいかなくて山あり谷ありの中、各々が生れた国や社会体制、経済状況や時代に翻弄されながら生きていくのが人生と言うものであります。

自分も50年以上生きてきて、過去、自分の周りの人々や自分自身が、成人君主の様な生き様をしていたかと問えば答えはNOだけれども、その上で、もがいたり、くやんだりしながらも連綿と命のバトンをリレーした結果としての今の社会が存在しているのだなと思うのでした。

来年も良い年にしましょう。

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