ラカン精神科学研究所 福岡

福岡の精神分析家 進志崇献 が精神分析的視点で綴っています。人はコンプレックス(無意識)に支配されています。

映画「怒り」の「怒り」の考察(File.058)

こんにちは、精神分析家 進志崇献@福岡です。

進志崇献(しんしそうけん):lacan.msl.f@gmail.com

原作:吉田修一、監督:李 相日のコンビの前作「悪人(2010年)」では、妻夫木聡深津絵里が熱演していて、結局だれが誰が「悪人?」なんだろうか?と考えさせられる作品だった。さて「怒り(2016年)」ではどう言う怒りが描かれるのだろうか?

ラカン精神科学研究所 福岡 公式サイト
http://lacan.agency-inc.com/

「怒」と八王子の殺人現場に残される。殺人犯が「怒」を抱えているのは間違いない。

物語のパートは「八王子の事件現場」からの「東京」「千葉」「沖縄」の3つなので、各々別のストーリーが展開する。

ここからネタバレします。

「八王子の事件現場」

物語の後半、犯人を知ってる男が語る犯人の殺人動機=「怒り」はこうだ。犯人は派遣社員として働いおり、8月の炎天下の中、八王子の住宅街に向う。作業現場がみつからず、会社に電話したら「それ一週間前の作業現場だ」と笑われ、唖然呆然となり暑さで一歩も動けず、他人の家の前でしゃがみこんでいたら、住人の奥さんが帰ってきて、その奥さんは親切心で「コップ一杯の麦茶」を差し出した。犯人は一気に麦茶を飲み干すものの、施しを受けた事で屈辱感が頭をもたげ「怒り」奥さんを惨殺した。

もちろん、それは「逆恨み」なのだが、犯人の住んでいたアパートの家宅捜索の場面では「如何に犯人が荒んだ生活を送っていたか」が描写される。

こんな理不尽な事があるのか?と思わせるが、過去「無差別殺傷事件の被害者」となった方々はみんな理不尽な動機で殺された。

「東京」

新宿2丁目のハッテン場で知り合った同性愛者の「妻夫木聡」と「綾野剛」。妻夫木と綾野は妻夫木のマンションで一緒に過ごすようになり、ホスピスの妻夫木の母を一緒に見舞うなど家族同然の関係になるものの、ある日、妻夫木の仲間宅が同一の手口で空き巣の被害にあう。更に、綾野が八王子事件の犯人では?と疑い、異性と喫茶店で楽しそうに話す綾野を偶然目撃してしまう。綾野を問い詰める妻夫木。結局、妻夫木の疑いは老婆心であったのだが、それがわかった時には既に綾野はこの世の人でなかった。妻夫木は綾野を信じられなかった自分を悔やみ、自分に怒るのであった。

「千葉」

父一人娘一人の父子家庭。「渡辺謙」と「宮崎あおい」。家出した「宮崎あおい」は歌舞伎町の風俗店でヘルス嬢として働いていた。父に連れ戻された時に、身元のはっきりしない「松山ケンイチ」が居着いていた。「宮崎あおい」と「松山ケンイチ」は恋仲になり一緒に住みだすものの、父親の「渡辺謙」は、ひょっとした「松山ケンイチ」は八王子事件の犯人では?と疑いを持ってしまう。結局、「宮崎あおい」は警察に通報し、家宅捜索で指紋鑑定の結果「松山ケンイチ」の疑いは晴れるのであるが、「松山ケンイチ」を信じきれなかった父と娘は自責(怒り)の涙を流すのであった。

「沖縄」

男関関係にだらしな母をもつ「広瀬すず」が母娘で沖縄に逃げてくる。娘「広瀬すず」は地元の男の子「佐久本宝」と仲良くなり、無人島探検を楽しむ(ここで出会ったのがバックパッカー森山未來」)。ある日「広瀬すず」は「佐久本宝」と一緒に那覇に出かけ、米兵にレイプされてしまう。「広瀬すず」を助けられなかった「佐久本宝」は自分の不甲斐なさを嘆く。訴える事もできず「誰にも言わないで」と「広瀬すず」は自分の弱さに涙するのであった。

殺人犯の末路は「小説」か「映画」で確認して下さい。
--------------------------------------------------

人を信じる事の難しさ、信頼関係の脆さを浮彫りする本作品である。

信じるとは、往々にして「その関係性において、相手を自分の都合のよい対象として認識し、その関係性が継続するものと思い込んでいる」事に他ならない。悪く言えば勝手な思い込みなのだ。

「信じていたのに裏切られた」「信じていたのにバックられた」裏切られたと思った瞬間、そう言う言葉が虚をついて出て来るのはその為だ。

精神発達論から言えば、人の肉体も精神も日々成長変化しており、一ヶ月前の愛のささやきが、今も語られる保証は何もないのである。

そうは言っても「夫婦関係」や「親子関係」を簡単に解消するわけにもいけず、いかにして信頼関係を継続するかは大いなる悩みの種となる。

親子関係、引きこもり、子育て、子どもの非行など、ご相談承ります。

ラカン精神科学研究所 福岡 公式サイト
http://lacan.agency-inc.com/

オールOK子育て法 再考察
http://agency-inc.com/all-ok/

ラカン精神科学研究所 福岡 公式サイト(スマホ対応)
http://agency-inc.com/for-pad/

精神分析家のセラピー日記(進志崇献)
http://agency-inc.com/journal/

進志崇献(しんしそうけん)公式フェイスブック
https://www.facebook.com/lacan.msl.f

進志崇献(しんしそうけん)公式ツイッター
https://twitter.com/lacan_msl_f